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日頃、恋愛と家族の関係とは?なんて考えませんよね。でも間に一つ単語を入れると‥‥。恋愛−結婚−家族。そういうことです。 一方には親が決める結婚があります。これは個人より家や一族を重視するやり方です。血筋だとか身分だとか財産をより安全に次世代に受け継がせようという発想。 さて、恋愛結婚により形成された家族の中の子どもたち。彼らには暗黙の保証が与えられています。愛により結ばれた二人から生まれたあなたは愛されている、と。そして児童文学はここを土壌として成立してくる。愛されているあなたが、もっと愛されるための情報としての物語。だから児童文学って、基本的には恋愛結婚支持派なんです。 「孤児」の子どもたちはこの愛を失った状態で登場し、この愛の原点である恋愛を否定する扶養者の元へとやって来ます。アンならマリラ、ジルーシャならジャービィ、そして、ポリアンナならパレーおばさん。 パレーの妹であるポリアンナの母親は、周囲の反対を押し切って恋愛相手と駆け落ちしたのですが、夫が死に、そして貧乏の果てに亡くなった。パレーは、妹を奪った男は憎いし、その血を半分受け継ぎ、折ある事に愛する父親の話をしようとするポリアンナには、愛憎半ばしています。あんたの両親が恋愛結婚なんかしたからあんたは不幸な孤児になったんだってわけ。仕方なくポリアンナは、父親の教えてくれたジョイゲーム(どんな不幸に見舞われても、それを喜びに転化するゲーム)を、パレーにではなく町中の人に広め、人気者となる。 ポリアンナに魅了された一人に、医者のチルトンがいますが、何故か彼とパレーはものすごく仲が悪い。パレーは、決して彼を家に入れようとしない。ところがあるときポリアンナは事故に遭い、寝たきりになってしまう。彼女を救えるのはチルトンだけ。仕方なくパレーは彼を家に入れます。そのとき発覚するのが、「隠された恋愛」です。実はこの二人若いころに大恋愛をしてまして、喧嘩別れをした。 はい、もちろん、ポリアンナのおかげで、二人は仲直りをし結婚することとなります。孤児はこうして再び両親を手に入れました。 恋愛結婚を熱烈に支持するための仕掛けが、孤児を巡る「隠された恋愛」なのです。そしてそれは、読者である女の子たちに、恋愛にはまることを薦めてもいます。その背後にはもちろん、大人社会から女の子に向けての隠されたメツセージがあります。 恋愛結婚はいいけれど、その恋愛の中身は吟味しましょうね。(ひこ・田中)
「子どもの本だより」(徳間書店)1995年5,6月号 |
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