ズッコケ脅威の大震災

那須 正幹・作
ポプラ社 1998.7

           
         
         
         
         
         
         
     
 作者の人気シリーズ第三七巻目のこの作品では、主人公の小学六年生三人組、ハチベエ、ハカセ、モーちゃんの住む花山町がマグニチュード7・3、震度7の大地震に襲われる。作者自身のあとがきにあるように、この作品は、一九九五年一月十七日に起こった阪神・淡路大震災の後、文通をはじめた神戸市の小学生たちとの約束(ズッコケ三人組に大地震を体験させる)で書かれた。
 地震が起こった時、ハチベエは釣りに、モーちゃんはデパートのレストランで食事、ハカセは図書館へ行くのに玄関で靴をはきかけていた。激震の後、ハチベエは柱の下敷きになった父を助け、ハカセは近所の人に助けられてつぶれた団地から脱出、人一倍地震をこわがっていたモーちゃんは、逃げ遅れた人を背負ったり、傷ついて動けずにいる人に手をかしたりしながら、それぞれ安全な場所へと避難して行った。
 三人は小学校の体育館で再会、そしてそこでの避難所生活がはじまった。ハチベエがボランティアのお姉さんの、モーちゃんの父親が亡くなったという勘違いを訂正もせず、せっかく悲しんでくれているのにがっかりさせるのは悪いと自分の父親も死にハカセの家族も大けがをしていると大嘘をつき、そのことで三人がもめたり、ハチベエの母親が再開した商売(仮設店舗のやおや)をわいわいと手伝ったり。確かに三人の周りは、街はがれきの山、水道・ガスの復旧も遅れ窮屈な避難所生活と大変な状況なのだが、そんな状況までも日常として取り込んでいく姿に大人の私まで元気づけられた。
 事の悲惨さを強調するあまり、その中で人がどう生きたのかが全く見えてこない、などといった書き方に陥ることもなく、危機的な状況のもとでもいきいきと暮らす子ども達とそれを支える大人達が描かれていて、作者は神戸の子ども達との約束をしっかり果たしたなと感じた。(奥田 清子
読書会てつぼう:発行 1999/01/28