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主人公は、二十三歳だというのに桜町小学校の六年生。家に帰ると、スポーツカーを乗り回す名探偵。人気シリーズ「ピカソ君の探偵ノート」の三冊目である。などというと、現在マンガやアニメで大評判の『名探偵コナン』を連想するむきもあろうが、この第一作はそれよりも十年以上前に発表されているのだから、こちらが本家筋ということになる。 ピカソ君こと杉本光素は、十数年前リトルリーグで活躍したサウスポー投手だったのだが、練習中の事故で腰椎部を骨折し、しかも奇病を併発して長期間休学した後に小学校に復学したのだ。そのピカソ君、アメリカン大リーグで活躍中の白石丈児が、行方不明なので捜索してほしいとの依頼を受けて、春休みにサンフランシスコに飛ぶ。白石はピカソ君のリトルリーグ時代のライバルで、クライアントは彼のマネージャーで日系二世のチコ太田。白石が球団のスプリング・キャンプ直前に姿を消したために、太田は立場がない。キャンプが始まるまでの三日間に白石を探してくれたら、彼の年俸の三%を成功報酬で支払うと、太田はいう。白石のすむ高級住宅街を手始めに、ピカソ君はタクシーをチャーターして白石の行方を探る。その後をしつこく追う怪しい車。サンフランシスコを舞台に、ピカソ君の英語交じりのユーモラスなしゃれた会話と、スリリングで痛快な活躍が文句なしに楽しめる。そして意外な結末が。子ども向け探偵小説の傑作である。(野上暁)
産経新聞2000/04/18
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