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「子ども」といっても、その指し示す年齢は色々で、だから「子どもの文学」や「子どもの本」という場合も、何処までがその範疇に入るのか、あるいは入らないのか。それは、はなはだ曖昧なのだ。「子どもの権利条約」では、十七歳までが子どもということになっているのだが。 この作品の主人公の少女ハナコは十七歳で、両親の都合により六年間のアメリカ生活から一年半前に日本に帰ってきた。専業主夫ならぬ専業シェフの父と翻訳家の母は〈子どもの主体性〉を頑ななまでに重んじる。すべてがあけっぴろげの母は、父との最初のセックスの話も平気で娘にする。 ハナコは幼なじみの太郎と学校の手芸クラブに入っていて、家で一緒に手芸をしたり料理を作ったりセックスしたり。太郎はハナコの家族と、彼女の十八歳の誕生日に何を贈ろうかと話していて、「赤ちゃん」なんて口走ってしまう。で、ハナコは妊娠して堕胎する。 淡々と軽妙に展開する少女の日常に、ダリアというフランスの性的に奔放な少女が主人公のポルノ小説が挿入される。人間存在と性という本質的なテーマが、しなやかで軽やかに語られて、危うく美しく潔い。 女子は十六歳で結婚できるのに、「子どもの文学」はセックスを回避しているという現状への鮮烈な一撃でもある。(野上暁)
産經新聞2000.11.14
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