だるまちゃんとてんぐちゃん

加古里子/作
福音館書店 1967

           
         
         
         
         
         
         
         
    

 正直いって、“だるまちゃん……”の絵はもう古いかもしれません。よく、本は永遠だ、と思っているかたがいらっしゃいますが、建物や音楽、ファッションや映画同様、本にだって時の流れ、は押しよせてくるものです、容赦なく―。
 ただし内容のほうはちっとも古くなってはいないし、ますます重要になってきているのではないか、と私は考えます。なぜかというと、この“だるまちゃん……”のシリーズは、ようするに、だるまちゃんがお友だちとどうつきあうか、お友だちを連れて帰った時に、おうちの人がどうやって歓迎してくれるか、ということを描いていて、そうしてこの本が描かれた時には、ここに描いてあること―豪華ではなくとも、遊びにきた子が自分は歓迎されて喜ばれているんだ、と感じられるような雰囲気でおやつを出してくれたり、なかよしのてんぐちゃんとなにもかも同じになりたい、と思うだるまちゃんに、だるまどんはおもちをついて、長い鼻を作ってくれたり、すること―は当たり前のことだったけど、いまからみたら、夢のまた夢、だものね。こういう“人間関係”に生まれてから一度も遭遇したことのない子にとっては、これこそが、カルチャーショックでしょう……というのは情けないけどホントなんだよ。
 それだけ親のほうに、包容力がなくなってきてるのよね〜。自分のうちにお友だちを安心して連れてこられる子どもがいま何人いるか……安心して遊びにいける、よそんち、が何軒あるか……。だからこの“だるまちゃん……”シリーズはいまや子どもたちの夢、であると同時に親のための教科書、でもあります。そう、子どもの友だちが来たら、こういうふうにふるまって欲しいんです。ぜひとも!(赤木かん子
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化塩野 裕子



▼加古里子/1926年生まれ。絵本・紙芝居作家。大学卒業後会社勤めのかたわら「民主紙芝居集団」で紙芝居活動に携わるなど様々な子どもの文化にかかわる。最初の絵本は「だむのおじさんたち」(59年、福音館書店)。以後、「かわ」「海」(福音館書店)〔かこさとしからだの本〕シリーズ(童心社)、「かこさとしほしのほん」<全四巻>(偕成社)などのいわゆる知識絵本といわれるものと、子ども文化伝承に関する「子どものカレンダー読本」<1〜12月>(偕成社)や、子どもたちに人気のある身のまわりのものを題材にした絵本〔だるまちゃん〕シリーズなど、実に多くの作品を生みだしている。