電子工作のはなし


佐伯平二


技報堂出版 1987


           
         
         
         
         
         
         
     
 物理の電気と技術の電気というのは、同じ電気でありながら、どうしてこう違うのだろう。まあ、ソフトとハードの違いだといってしまえばそれまでだが、双方とも現代科学の申し子、このふたつをうまくつなげれば、面白いものが生まれるのではないか。と、たぶん、そんな発想でできたのが、この『電子工作のはなし』だと思う。
 第一部は、電子の移動、電圧と電流の関係、磁力線発生の原理、コンデンサやダイオードやトランジスタの仕組みや機能などの解説、第二部は、電子回路記号の読み方や電子部品の知識、テスターやハンダごてやその他の工具の使い方の紹介、第三部は、電子風鈴やFMワイヤレスマイクやマグネット式防犯ブザーの作り方を説明という構成。
 この本でいいのは、いろんな電子装置を紹介しながら、その仕組みや、それぞれの回路での各部品の役割をしっかり説明しているところだ。たとえば、同じトランジスタにしても、エレクトロぼたるではその増幅作用を利用しているが、電子目ざまし器ではそのスィッチング作用を利用しているといった具合である。(暗くなると緑色に光る不気味なエレクトロぼたるの材料費は、秋葉原で約七〇〇円だった)
 中学生以上、おとなまで楽しめるが、「電子工作」というタイトルをみただけでこの欄をすっとばした方には、とくにお勧めしたい。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1987/10/11