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ドイツのミリアム・プレスラーは実にきっぱリと、そしてむだな言葉は使わない作家です。だからいつも物語のあちこちに、そのまんま使えるセリフがゴロゴロころがっているのです。 主人公のトーマスは足が不自由です。 パパは成功した建築家でめったに家にいないし、ママはそれが不満で、だから子どもたちもあたらずさわらず自分のことだけ考えてそっと生きているという感じです。特にこのママは力がないね。 〃お客がくるとママは僕を部屋から出すまいとする。それでも僕が誰かの目にふれるとわざとらしい声でこういうんだ。ものすご〜く頭はいいんですのなんてね〃という具合。 弟のフリーダーの頭が勉強にはむかないのは本人のせいじゃないのにひどく怒るし、よくたたく……。パパはなんでも逃げ腰で、しかも女の人がいるのをフリーダーが見つけてしまった……。彼は精神的にもきゃしゃで気だてがいい子だから、なんでもまっすぐに受けとめてしまうのよね。 その彼が、ある日帰ってこなくなリます。その日は書きとりのテストが返ってくる日で、彼は落第するのをとても恐がっていた。 そうして、弟が自殺してしまったあと、トーマスは何が、誰が弟をそこまて追いつめたのか、誰が石を投げたのか、必死で考えて考えて考えます。 そして、自分も石を投げたのだ、ということを認めて、初めて自由になるのです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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