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世紀を越えて、子どもたちにお土産として携えていける本の一冊をご紹介したいと思います。「子どもたち、かわいそうになあ」とつぶやいたのは象のオスカル。キリンやライオンといっしょにサハラのチャド湖の水を「一杯やりながら」の話しあいが、全世界の動物会議の発端。「子どもたち」とは人間の子どもたちのことです。大人の引き起こす戦争や貧困で犠牲になる子どもたちのために、動物たちは立ち上がり、会議を招集したのでした。 『エーミールと探偵たち』など多くの名作で知られるケストナーが五十歳の時に書いたこの作品は、最近まで全集の中か、小型判の絵本でしか見ることができませんでした。一九九九年にケストナー生誕百年を記念して、ドイツで原型の大型絵本として復刻されたものが、日本でも出されました。 画家トリアーの絵の素晴らしさもこの判型で改めて感じさせられます。これは二人のコンビの最後仕事となりました(原案はイェラ・レープマンという女性です)。 クジラや空飛ぶジュウタンに乗り(シロクマたちは氷山に乗って)、全世界から駆けつけてくる動物たちが、戦争をなくし、子どもたちを大切にし、すべての国の境をとび越えようと訴える様子は何度読んでも面白く、同時に開催されている人間たちの会議のばかばかしさへの風刺も効いています。最後に動物たちのとる強硬手段はなんとユニークなことでしょう! この絵本は、第二次世界大戦後まもない一九四九年に出されていますが、半世紀経っても世界の状況は変わらず、従ってこの本の価値も変わりません(今だと動物たちは環境問題でも怒らねばならないでしょう)。 ナチの時代、発禁・焚書の憂き目に会いながらもドイツに留まって書き続けた作家ケストナーの面目が躍如とした作品でもあります。(きどのりこ) 『こころの友』2001.02 |
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