道具と機械の本・てこからコンピューターまで

デビッド・マコーレイ

歌崎秀史訳・岩波書店


           
         
         
         
         
         
         
    
 クリスマスが近いからというわけではないけど、こういう本をみると、神への感謝の気持ちがわいてきます。
 そう、『道具と機械の本・てこからコンピューターまで』の話です。 道具の仕組みや構造を図入りで説明した本なのですが、その手法たるや、強引にして繊細、かつユーモラス。こういったものをこれほどわかりやすく、これほど楽しく説明してくれた本があったでしょうか。一目瞭然、一読明快、一瀉千里なのであります。
 たとえば、大きな岩を上にあげる場合でも斜面をころがしていくと楽。なんのことはない、物理でいう作動力と距離との関係ですね。ところが、次のページは「くさび」。「斜面」というのは「くさび」でもあるのです。つまり、「くさびは動く斜面です。物を傾斜面に沿って持ち上げるかわりに、面そのものが動いて物を持ち上げてくれるわけです」。このあたりむつかしく思えるかもしれませんが、そこは図という強い味方がありますから、ご心配なく。
 そして次つぎと「くさび」の原理を利用した道具が並びます。シリンダー錠、おの、はさみ、すき、ファスナー……ファスナーのどこが「くさび」かですって?
 まあ、読んでみてください。
 はじめのあたりを紹介してみましたが、まだまだ序の口。レーザー、ホログラフィー、コンピューターまで、大胆不敵に説明してくれます。
 マコーレイは、道具や機械の構造にうとい人たちのために、神からつかわされた救世主のような人です。(金原瑞人)

朝日新聞 ヤングアダルト招待席90/12/16