ディア・マザーグース

ひらいたかこ

架空社 1990

           
         
         
         
         
         
         
     
 マザーグースといえば、いわずとしれた英語の童謡集のこと。子守歌、数え歌からナンセンスな歌まで、おもちゃ箱をひっくり返したようなという形容がぴったりの歌集だ。
 このマザーグース、詩人だけではなく多くの画家やイラストレーターまでもとりこにしてしまった。海外ではいうにおよばず、日本でもスズキ・コージ(角川文庫の北原白秋訳)、和田誠(講談社文庫の谷川俊太郎訳)らがそれぞれユニークな挿絵を描いている。
 ここでもうひとり、ひらいたかこを付け加えたい。『ディア・マザーグース』はオールカラーの素敵な絵本だ。コミカルな絵、メルヘンチックな絵、ほのぼのやさしい絵、ひたすらきれいな絵、ちょっと怖い絵(とくに最後の「わたしたちみんながっくりきてる」という詩につけられた絵はぞっとするほど美しくてこわい)。
 大胆で微妙な色使いといい、デフォルメされた町や建物の不思議な遠近感といい、みあきることがない。
 それから、ひらいたかこと磯田和一による『マザーグースころんだ・ロンドンとイギリスの田舎町』(東京創元社・一三五九円)もあわせて紹介しておこう。これはロンドン、セント・アイヴス、ウィンチェスターといったマザーグースにゆかりの深いイギリスの町々をたずねた旅を、エッセイと絵と写真で構成した愉快な本で、表紙の絵がまたいいんだ、これが!
 どこまでも果てしなく広がるマザーグースの世界。ひらいたかこ版で存分にお楽しみください。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 90/07/22