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この絵本の主人公ワイラは、アイマラ族のインディオの女の子です。といっても、アイマラ族っていわれてすぐ、あぁ、という人は少ないと思うけど、アイマラ族は南米の、いまはボリビアと呼ばれている場所に、三万五千年もの昔から、ずーっと住んでいる人たちです。 ティティカカ湖っていう名前の湖のこと、きいたこと、ない? でもって野生のジャガイモを改良して農業をし、高度な文明を持ってたんだけど、スペイン人たちが入ってきて支配されちゃったのね。いまではインディオがボリビアの人口の三分の二をしめるにもかかわらず、アイマラ族は自分たちの言葉を話すことも、生活習慣も宗教も禁じられて、自由の民ではなくなってしまっている、ってわけ。 これはワイラの家族が一年に一度のアイマラ族のおまつりに、何日も何日もかけて歩いていくお話を通して、いまのアイマラ族の暮らしや考え方や希望を描いたものです。 たとえば、百年に一度しか咲かないサボテンの花を見ると人々は願いごとをするんだけど、願いごとは必ず自分だけのためではなく、たくさんの人々を幸福にするものでなくてはならない、なんてのが出てきて、ふうん、て思う……。 はっきりいって、地味だし、あんまり売れていないだろうけど、いい本です。 そうしてですね、なんでこれをお父さんの本に入れたかというと、トポーコ氏はスウェーデン女性と結婚し、スウェーデン系インディオの子どもが三人いらっしゃるんですが、この本はその子たちとインディオの子どもたちすべてにむけて描かれたものだからです。インディオの誇りを持ち続けるために――。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化天川佳代子 |
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