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表題のほか、五編の短編が載っていますが、どのお話も、ハッピーエンドとはいえません。 「おいちゃんと」という短編の主人公の少年は、父がいなく、母が働いているので、夕食はいつもひとりで「よしだ」というそばやで済ませます。少年と、この店の「おいちゃん」とのふれあいと別れが、淡々と描かれています。 「おいちゃん」は、少年をお客さんとして一人前に扱ってくれる、口下手で職人気質の店主です。 カギっ子の少年にとって唯一の心安らぐ場であった「おいちゃんの店」が廃業する日の、少年のかなしさが、しみじみと伝わってきます。 子どもだからといって、厳しい現実から離れて生きるわけにはいきません。 いいえ、時には大人よりもっと過酷な状況の中で生活せざるをえない子どももいっぱいいます。 今は、大人の方が、子どもに守られ、助けられている時代なのかもしれないとこの本を読んで思いました。
(く)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子 |
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