手に取る日本史教材・入手と活用

宮内正勝・阿部泉

地歴社


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 『飛ぶ教室』という雑誌の書評放談である人が「一冊の本を読むよりか、原爆資料館のお弁当箱一つ見たほうがずっとリアルですね」といっているが、「物」(資料)はときとしてすごい力を発揮することがある。
 これは、日本史にでてくる「物」を活用して歴史をもっとリアルなものにし、授業をもっとエキサイティングなものにしようではないかという提言の書である。
 たとえば田沼意次の時代に日本の重要な輸出品であった「俵物」や江戸時代の商品作物であった「四木三草」の入手方、平安時代から室町時代の絵巻物の複製の入手方とその値段、また『解体新書』は現代語訳の文庫がでていること、さらに日本史の授業に使える歴史小説(松本清張の『石の骨』、司馬遼太郎の『空海の風景』など約七〇冊)、といった情報が授業にかんするエピソードといっしょにエッセイ風にまとめられている。それに豊臣秀吉の朝鮮侵略については韓国の絵本を使うという発想もすばらしい。これは李舜臣(リスンシン)という日本軍にたちむかった朝鮮の英雄を主人公にした絵本だが、日本でも簡単に入手できるそうだ
。 いちおう教師むけに書かれた本だが、日本史に興味のある人や、知識のつめこみだけの日本史の授業に疑問を感じている若者すべてに勧めたい一冊である。
金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/11/06