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表紙を見た瞬間から、なんだか心がふんわりする本、というのがありますが、この『天使のかいかた』の表紙を見たときも、「おもしろそうだな」と思わず顔がほころんでしまいました。 ピンクのいかにも女の子っぽい表紙というのは、普段の私の好みではないのですが、わたがしをなめたときのようなふんわりとしたやさしい甘さを感じて、どういうわけか惹きつけられてしまったのです。表紙のまわりにちりばめられた金色の星、水色とたまご色の帯の配色もとてもきれい。 というわけで、ゆっくりと表紙をめくってみました。ふつうだと中身を紹介する文章が入るカバーの袖の部分には、かわいらしい天使の絵がちりばめられ、見返しには、草原と青空が(ここまでだけでも期待感をいやがおうでもあおられます)、もう一枚ぺージをめくると、女の子が必死で本を読んでいる絵が目にとびこんできます。 そう、この女の子は、ペットを飼っている友だちがうらやましくて、自分でも飼えないものかと、ペットの飼い方の本を一心に読んでいるのです。 で、主人公の「さち」が飼うことになったのは、なんと野原でひろった「天使」でした。天使のたべものは、さちが話してあげる「お話」で、天使のうんちは、「お星さま」。でも、友だちのペットとは違って、他の人の目には見えません。ちょっとつまらないけれど、それでもさちは、大満足。だって、念願のペットができたうえに、このペットはさちに勇気や元気を与えてくれるのですから。 ところが、ものがたりは、ペットができたところでは終わりません。ある日、学校に転校生がやってきて…。ここからが、胸キュンの、この本のもっともいいところなので、どうぞご自分で読んでみてください。 この作品は、絵と文と両方を手がける作家ならではの創意工夫に満ちています。二色刷りの(最後のほうは三色)ペン画のイラストは過不足なく、文章とバランスよくすっきりとおさまっていますが、わたしが最も好きなのは空間の使い方です。とくに後半、広い空とさちの大きさの対比で、さちの気持ちのうつりかわりをうまく表現しています。 ぺージをめくりながら、私は自分の小学生時代を思い出していました。私自身は、ペットを飼いたいと思ったことはあんまりないのですが、魔法つかいや天使などがほんとうに存在すると信じてうたがわない子どもでしたから、もし、この本をあのころに読んでいたら、早速野原に行って、目を皿のようにして天使がいないかどうか探しまわったことでしょう。「今日こそ、きっとみつかる」と思いながら。 芝大門発読書案内「甘さの心地よい絵本」 徳間書店「子どもの本だより」2003年5-6月号 より テキスト化富田真珠子 |
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