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最近、地方に腰を据えて、じっくりと児童文学に取り組んでいる作家の活躍が目だつ。(今に始まったことじゃない、宮沢賢治の昔からそうだったよといわれるかもしれないけど….)で、そんな作家の一人に富安陽子さんがいる。 『クヌギ林のザワザワ荘』『やまんば山のモッコたち』『キツネ山の夏休み』など、一貫して日本の土着の妖怪狐狸を素材にファンヌジーを書き続けている人だ。 最新作のシリーズ「小さなスズナ姫」(偕成社 1996)も、喜仙山脈といういかにも日本的な山々を舞台にした、山神の女の子の物語だ。 山神の一人娘スズナ姫はもうすぐ300歳。といっても人間の年にすれぱせいぜい6歳ぐらいだから父親からみれば、ほんのヒョッコのはず。ところが、誕生日のプレゼントにスズナ山を治めさせてほしいといわれて、父親は慌てふためく。姫はいつのまにか呪文も覚え、賢く成長していたのだ。 そこで父親たる山神は、1日でスズナ山を秋の色に染め替えることかできれば望みのものを与える、つまり自立を認めようという。 スズナ娘は張り切って、自家用雲「天のスズシロ」に乗って、スズナ山に下りてくる。春の七草でおなじみのスズシロとは大根のことだから、これも粋な命名だ。シンプルだがスケールの大きい物語を支えるのは、こうした細部の魅力的な道具立てだ。例えば、スズナ姫の食べる「雲のパン」は朝一番に谷底から沸きだした雲を集めてこねあわせ、それを夕方、沈むお日様の光りでこんがり焼いたもの。かと思えば、口から吐きだした霧を手のひらで包んで息を吹きかけ転がすように回し続けて、綿飴みたいに雲鞭作り出しちゃったりもする。もちろん、スズナ山を秋の色に染め替える方法もなかなか擬っている。ぜひ細部を楽しみながら読んで欲しい。 さて、山に住む動物たちの助けを借りてめでたくスズナ山を手に入れ、自立を果たした姫は、2巻目では「枯れ沼」に水を取り戻すべく、風の神や北斗七星である天の童児などの力を借りて大奮闘。私自身、日本の神話や民話はファンタジーの宝庫だと思っているが、きっと富安さんも同じ考えなのに違いない。飯野和好さん描くところの、チョー元気印の小さな山神スズナ姫は、一本気で負けん気な性格をよく伝えてはいるものの、やっぱり、この純然たるジャポニズムの世界には違和感、あるなあ(末吉暁子)
MOE 1996/08
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