ティナのおるすばん

イリーナ・コルシュノフ
石川素子・訳
ベネッセ・コーポレーション

           
         
         
         
         
         
         
     
 『ティナのおるすばん』の主人公ティナはドイツの八歳の女の子です。えーっ、なんで八歳の女の子の話を高校生にもなって読まなくちゃなんないの? という人がいるかもしれないけど、私、この本は高校生どころか、大人にも読んでもらいたいの。
 字は大きいし、文章はやさしいし、まあ、三十分もあればラクに読めるでしょう。でも、ここに書いてあることは大人だってやれてないこと、理解してないことが多いよ。
 たとえば先生が代わってから、ティナは国語の教科書が読めなくなってるの。新しい先生はイヤミで皮肉屋で言葉ひとつで他人をいじめるやり方をしっかりと心得ている人だからです。ティナは抗議をしなくてはいけないとわかってるんだけど、できない……。
 それから親友に泥棒扱いされたことから、彼女だって完全な人間ではない、ということに気づく。また、クラスのトルコ人の子を大人がいじめたことから自分のお父さんもイタリア人だから会社から遠いアフリカへ行かされても文句がいえないんだ、と気づいたティナは、いきなり広がってしまった世界で自分を立て直そうと悪戦苦闘するのです。
 八歳の子が八歳なりにこれだけがんばってるんだったら、こっちもやらざるをえないな(あー情けない)と思わせられる本です。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1988/03/13