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「魔法少女マリリン」の二作目。魔法学校の夏休みに訪れたあこがれの都アルシャンで、生まれてはじめての冒険をしたマリリンは、まだ夏休み中。だが「身のまわりにいる霊たちの声に耳をかたむけてみましょう」という課題学習に失敗して、二つのひとだまにまつわりつかれて困っている。冒険仲間の女剣士ヒカルさんの剣でも追い払えないそのひとだまを、同じ仲間の僧侶イトークさんは簡単に片付けてくれる。そこへ、やはり仲間の剣士であり吟遊詩人ヨーティさんがあらわれて、今晩中央広場で歌姫「銀のユナイア」のリサイタルがあると告げる。 だが、美しい天才的歌姫は、えたいの知れぬ者たちに襲われてさらわれそうになる。誘拐者たちは闇の女神を信仰するクローア国から来た者たちとわかる。マリリンとその仲間は力の限りに闘うが、歌姫の誘拐者は、彼らだけではないことがわかり、歌姫の命はいよいよ危なくなる。 人間関係も物語の筋も相当複雑だが、たくみに語られるため、まったくわずらわしくない。イギリス作家ジョーン・エイキンの作品は、事件が矢継ぎ早すぎるといわれながら多くの愛読者を持っているが、この作品も、今の子どもにぴったりの速度で、しかも今の子どもの言葉で語られている。夢と冒険という不易の物語を、この新しい語り部は、じつに楽しげに語る。(神宮輝夫)
産経新聞 1996/07/12
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