徳間のゴホン!

01ヘンだよこの本

           
         
         
         
         
         
         
         
         
    
 徳間書店の絵本・児童文学のシリーズがス夕ートして、はや四年。出版した本も百三十冊を越え、様々な夕イプの本が揃ってきました。そこで、この新しいコーナーでは、その中から毎回、何冊かをこ紹介したいと思います。
 第一回目の特集は、徳間書店の「へンな本」! 正統派の感動、というのとはちょっとずれるかもしれないけれど、一度読んだら忘れられないことはうけあいの本…。
 まずは「ふしぎなトイレくん」(ニコラス・アラ作絵 山内智恵子訳)。ある日トイレが生きて動きだし、家中のものをばりばりごぼごぼ食べてしまうという絵本。トイレくんは、きれいずきでコうるさビンェフリーのおばさんまで「ぱくっ、むしゃむしゃ、げぷっ」。ジェフリーが海に連れていってあげると、「じゃー、ばしゃばしゃ」と大喜び(水が好きだから)…。ま、応最後はおばさんは無事で、悲惨な(…下水に流れちゃってたとか…) ことにはなってませんから、ご安心を。トイレと一緒に電車で海へかうジェフリーの嬉しそうな顔を見ると、こんなトイレがほしくなるはず?
 「クリンドルクラックスがやってくる!」は、トカゲ通りに住むちびのいじめられっこラスキンが、なぞの怪物を倒して通りを救う、という、大筋としてはまっとうな(?)冒険物語。でも、この通りに住む人たち、ラスキンを含めて全員 「へン」。「シェィクスピア」と聞いただけで恍惚として涙を流す先生、友だちがほしいために動物園からワニを盗んで来ちゃう鋼育係、いつもいつも 「夕・ボィーン」 という音を立ててサッカーボールをついているいじめっこ。(雨の中でボールをつくと、「ダ・パシャ・ボィーン」と音が変わるんだな、これが。)ラスキンが通りの人たちはみんな友達、と悟る、本来は感動的なシーンも、「ケィブ夫妻は友達だ。チェリーエードをくれたからだ」ってなぐあいで、理由はすべて「何かくれたから」(食べ物、多し)。いいのか、そんなんで…? だけどちゃんと「友情」「冒険」「別れ」「成長」なんかも押さえてある書き方で、「まとも」と「へン」のさじ加減が絶妙!
 最後にもう一冊。絵本「おしゃべりなニンジン」(ジャン・マーク文/トニー・ロス絵/たなかかおるこ訳)。うぬぼれやでなまけ者のニンジンどもに、延々とからかわれ続けるまじめなウサギたちが、ある日ついにキレて…? ユーモアのある絵では定評あるトニー・ロスが捕く、二ンジン全滅の図」や「歌うカボチャの図」は、へン以外の何物でもなく、ひたすらおみごと! まったく様々な本、様々な面白さがあるものだ、ということを思い出させてくれる「へンな本」、私たちはけっこう楽しんで作っています。(上村令
徳間書店 子どもの本だより 1998/07,08