徳間のゴホン!

第11回 「へんし〜ん!」

           
         
         
         
         
         
         
     
 何か別なものになってみたい、変身してみたい、という願望を持ったことはだれでも一度はあるのでは? でも、本当に、そうなっちゃったら、実はとっても大変なのです。
「パパが金魚になっちゃった!」は、題名どおりの愉快な物語。魔法の本に載っていたことばをとなえたばっかりにパパを金魚にへんし〜んさせちゃったレオ。パパが金魚になってしまったことがばれたら一大事。それに、大事なパパをこのままの姿にしておくわけにはいかないと、レオと仲間たちは、その魔法の本を求めて、パリの町中走りまわります。画家のパパの個展の期日はせまってくるし、ひょんなことから他の金魚といっしょに水槽に入れられて、どれがパパなのかわからなくなったり、別居しているママには不審がられたり……。おまけに魔法の本は見つからない。ドキドキしながらどんどん読める楽しい一冊です。
 「パパが金魚……」が現代を描いたお話なら、「ロバになったトム」の舞台は、うってかわって中世のイギリス。自分は頭がいいから、いつかロンドンに出てお金持ちになるんだと夢見る怠け者のトムは、妖精からもらった贈り物の価値に気づかず、なんとか贈り物の魔法を解こうと、旅にでます。そして、そこで運命の女性ジェニファーと出会ったことから、ロバに変身してしまうのです。けれどロバの生活も捨てたものでは、ありません。ロバの姿のまま、トムはジェニファーとともに、大金持ちになる夢をかなえようと、ロンドンに出向きますが……。昔話の要素をふんだんに取り入れながら、歴史物語の面白さの味付けをしたイギリスのファンタジーです。
 ところで、変身するのは、なにも人間ばかりではありません。ちょっと視点を変えてみると……そう、この「にたものランド」の世界では、なにもかもが別のものに変身しています。マッシュルームが車のタイヤに、にんにくがずぼんに、セーターがビルディングに……言葉でいうだけじゃ、わからない。やっぱり絵本は「百聞は一見にしかず」です。どうぞ本を開いて、にたものランドへ旅してください。一歩この世界に踏み込むと、その魅力のとりこになること請け合いです。その証拠に、たまたまこの絵本が机の上に出しっぱなしになっている時に編集部に来てしまった運のいい(?)お客さまは、みんな、「うわあ!すごい!」と感嘆しながら、すっかり「にたものランド」の世界にはまって帰って行くのですから!
<編集部・米田

「パパが金魚になっちゃった!」リリアンヌ・コルブ&ローランス・ルフェーヴル作/
矢島眞澄挿絵/佐々木寿江訳
「ロバになったトム」アン・ロレンス作/斉藤倫子訳
「にたものランド」ジョーン・スタイナー作/前沢明枝訳
徳間書店 子どもの本だより2000/1.2