となりにいるのはだれ?

ヘスス・バジャス・サバルサ:作/中西智恵美:訳
岩崎書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 スぺインの本が入ってくることはあまりないのですが、たまに入ってくるものはおおむね奇妙な味のもので、へえ〜、と思うものが多いです。
 この『となリにいるのはだれ?』の主人公は、八歳の男の子デリオと、やっぱリ同じくらいの女の子リスタです。
 二人とも一人っ子で、両親は共働きで家にいず、そしてスぺインの中流階級以上の家では子どもを一人で外に出すことはしないので(危ないんだってさ)、二人は退屈と孤独でひびわれていました。
 大人にはなんてことなくても、子どもにはこたえるものってあるのです。
 その一番大きいものが、親に愛されていないということと、自分と同じ大きさの友だちがいない、ということでしょう。
 テリオは、ある日、指でコンコン壁を叩き始めました。指が白くなって太くなってきても、そうして指を手のひらにかえて、その手のひらに豆ができてもやめることができなかったのです。、
 もう独りぼっちには耐えられなくなったのです。
 そうしたら、なんと、向こうから返事が返ってきたのでした。
 夢中になったデリオは必死で壁に穴をあけました。
 そうしてある日、遂に二人は会えたのです。
 この二人の親は、二人を殴ったリはしていません。でも、これも虐待の形の一つでしょう。
 この幼年文学をぜひ絵本の棚と、Y・Aの棚と、そして子育ての棚に入れていただきたいと思います。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20)