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転校生のしみずさんは、教室のバッテン表に、バッテンが十個もついている。毎日つめを切ってこないので、衛生検査で不合格になってしまうらしい。 バッテンの高さでは断トツで、とうとう表のてっぺんにまで行きついてしまったひろきは、ちょっとしたことから、しみずさんに関心を持つ。 ツメを切らないって、本当だろうか。あいつ、なにか秘密くさいぞ、という好奇心だ。 思わせぶりな作者の話の運びにすっかりのせられ、読者もしみずさんの秘密を知りたくなる。手に「障害」のある子なのかななどと考えながら読みすすんだ。結末は意表をつく。 いつも握りしめていた左手の中指のつめの中に、しみずさんはきんぎょを飼っていたのだ。そのきんぎょは海にいたのだ、と少女は言う。彼女が海のある県からの転校生だったのを、おとなである評者は思いだす。 だが、低学年の子には、その種の連想は無理ではあるまいか。そのきんぎょを海にかえすという少女の決意が、なにを意味するのか、もう少しわかりやすく書いてもいいのでは。それにしても指のつめの間にきんぎょを飼うというのはスゴイ。飼い方を教えて、と小さい読者から手紙が来るようなリアリティーがほしい、と思う。長崎夏海もそろそろ飛躍のときだ。(斎藤次郎)
産経新聞 1997/02/04
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