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大島弓子の最新短編集『つるばら つるばら」の一番目、「夏の夜の貘(ばく)この一ぺージ目を見て、思わずのけぞってしまいました。そこにはなんと〃人には実年齢と精神年齢があり、ぼくは八歳なのに、精神年齢だけが異常発達をとげて成人してしまった……〃というようなことが書いてあり、〃うれえるなかれ ぼくのまわりはほとんどが 子供なのである〃と結んであるのです! そうして次のぺージをあけると、半ズボンはいてランドセルしょった二十歳の青年が、小学校三年生に交じって授業をうけている……。悲しいことに、というか当然というか、先生も子どもです。フケた顔して、メガネなんかかけてますが、やっぱり子ども……。 うちへ帰ると、お父さんも背広着てるけど子ども、お母さんも子ども、ボケて〃ゆうげじゃ〃といいはるおじいちやんにいたってはなんと一歳くらいの赤ん坊……。 そのなかでわずか八歳の彼は、けなげにもたった一人で大人をやっているのです! うわー、うわー、うわーっ、すごいっ! だってこれって、正確に、今の日本の状況だよ……。この奇妙で居心地のよくない悲しい世界は、そのまんまホントに現実です。 だから今、実際にオトナやってるアナタたち、疲れたらこれ読んで元気出してね。わかっている人がいないわけではないのだから。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1988/11/13
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