堤中納言物語

坂田靖子
中公文庫 1999

           
         
         
         
         
         
         
     
 気に入らないものもいくつかあって、全巻買い! という気分にはなかなかなれない中公文庫の”マンガ日本の古典”だが、坂田靖子の『堤中納言物語』は買い!
 特に”虫めずる姫君”、いいねえ!
 これはかの「ナウシカ」の原型、といわれている話ですが、ここではいっそう、まゆげはぬかない! とか日に焼けて真っ黒! とかお歯黒もしない! 人間は自然が一番よ、人にみられてどこが悪いの? と主張する姫になってて楽しいです。
 なあんて現代的なの!?

 新刊少女マンガから。
 明智抄「野バラの国」。
 明智抄のマンガはそれも思いっきりホントのことを描くのでハードだが今回もそう。
 タイトルの「野バラの国」はアル中でどうにもならない父親と、おろおろするしかない母親のあいだで一生けんめい正気のバランスを保とうとする小学生の女の子の話である。
 同じアパートで死んだ人の部屋に新聞がたまっているのを見て、シンブンをためると人が死ぬ・・・・と、父親が死なないように必死にシンブンを取り込むところなど本当にうまい。
 そうして彼女はしだいに空想の友だちと、彼女が語る”どこにもない国”に魅せられていくのだが、ラストの助けかたもみごととしかいいようがない。
 それにくらべて活字のほうは「カラフル」はまだしも「ハッピーバースデー」なのだからおそれいる・・・・。
 あんなひどいインチキ本・・・・。
 でも、こんな高度な内容のストーリーをわかる人は少ないんだろうな。
 日本中の教師がこのマンガが読めるくらいだったらモンダイはガクンと減るだろうに。
 てなわけであまり売ってないんですが、みつけたかたは読んでみてくだされ。(赤木かん子
1999/12/24