中学一年コース

学習研究社 1991


           
         
         
         
         
         
         
     
 出版物の多くは性別、年齢別、嗜好別など、ある程度読者層が絞られているけれど、自分が除外されているものを読むのも結構おもしろい。読者として視野に入っていないところでどんなことが伝えられているかを知るのは。
 例えば中学〇年コース」。
 どんな読者層を設定しているかがこれ程はっきりしている雑誌はない。なのに、はっきりしない妙なことが起こっているの。学年的にははっきりしているけど、この年齢って学年とか年齢以上に性別を意識する(だったでしょ)。だから、この雑誌、参考書的部分を除いては、女の子/男の子、二つの性、それぞれに向けての特定の情報が混在してしまう。SMAPのデビュー記事と、高橋由美子の記事、「お元気少女のハッピー講座」もあれば、「91夏 男を演出する こだわりグッズ☆カタログ」もある。それを見て、ジェンダーはこうして作られると目くじら立てたくなるかもしれないけど、そんなの女の子専用雑誌と男の子専用雑誌に山ほどあるし、教科書にもある。それよりむしろ、こいつが学習雑誌であるがために、女の子が男の子向けの情報を読めるし逆もあることになっている点を注目。それって、男の子でいえば、彼ら向けの雑誌で幻想の女の子像をインプリントされるより、ずっといい。やっぱ、結果的に、りっぱな学習雑誌です。
 もう一つ。今手元にある一番新しいのは九月号。夏休みの宿題をどう簡単に片付けるかの情報が満載されている。「もうあとがない! 夏休み 残った宿題・スピード完成法」。読書感想文を一日で書けるテクニックと一日で読める(先生が喜ぶテーマの)作品リスト。
 理科の自由研究用には、具体的なテーマの解説だけではなく、そのための材料と、レポート用紙に貼るための実験結果の写真までついた資料を金さえだせば送ってくれる。このことをどう思います? 手抜きの薦めをしていてけしからん!?
 どう思ってもいいけど。
 それで、ホントに手抜きかというと、そうでもなかったりする。さっそく、金を出して自由研究の材料と資料を手に入れて実験してみたの。そしたらこれが結構面倒。材料と資料で手抜きしても、やっぱり実験は自分でするしかないのだ、というのが実感できる。おかげで私は、キウィが電池になることや、植物の吸水力は葉の数の関係することを知った。あ、違う。そんなことはたぶん中学生の時にちゃんと習っていた筈なのに忘れていたのや。
 思い出せてよかった。(ひこ・田中)
朝日新聞91/09/13