ナバホの歌

スコッ卜・オデール:作
犬飼和雄:訳 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 外国の本というのは、大人が思っているより読むのに力量というか、背景〃が必要です。
 ふつうは、たとえばイギリスならイギリスの本を何十冊も続けて読むことで、その国の歴史、文化という背景が知らず知らずのうちに積み重なって理解力がついていくもので、もうすでに二十年、三十年生きている人は、トム、といったら男の子の名前で、パリといったらフランスの首都の名、という背景知識が入っているわけですが、自分が知っているからといって子どもも同じことを知っているわけじゃありません。
 おまけに向こうの書き手は、これをアジアの日本人の子が読むだろうなんて考えて書いてくれるわけじゃないですから、こっちの知らないことをいろいろ省略してくれます。
 この『ナバホの歌』は、昔、アメリカ大陸に白人が入ったきて、インディアンたちを草も生えないような貧しい居留地に追いやった旅を描いたもので、途中、体の弱った老人や子どもはバタバタ死んでいった、過酷な旅だったそうてす。
 インディアンものは、それだけで棚ができそうなほど本があるので(大人・子ども両方合わせたらね)、ここに至るまでや、ここから現在までの歴史の知識は、大人なら誰でも仕入れることができるでしょう。
 これはその旅の列の中から必死で抜け出し、誇りと気高さを持ったまま、山で暮らすことを選んだ若いカップルの恋物語にもなっていて、置くとしたら、やはりY・Aコーナーが一番しっくリとくるでしょう。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20)