永い夜

ミシェル・レミュー作
森絵都訳/講談社/1999

           
         
         
         
         
         
         
     
 パパとママにおやすみなさいをして、少女はベッドに入ったけど眠れない。ふしぎなことがいっぱい、頭の中をぐるぐる駆け巡る。「永遠の果てはどこ?」「べつの星にも生き物はいるの?」なんて考えているうちに、自分自身の存在に対しての疑問や不安が襲ってくる。「わたしたちはどこからきたの?」「わたしはだれ?」。これから遭遇するだろう、いろんな不幸や人生の落とし穴をどう避けていけるのだろうか? 「運命ってなに?」「偶然ってなに?」「もしもこの世界がすべて夢で、夢のほうが現実だったら……?」
 愛されなくなる不安。戦争、恐ろしい動物や怪獣。死の恐怖。人は死んだら何処に行くのだろうか? 永い夜の闇の中で、少女は愛犬と一緒に様々な疑問を投げかける。それはまた、幼い頃に誰もが抱く疑問や不安に重なってくる。

 A5版横長変形で二百四十ページ。本文はすべてモノクロ。絵本と言っていいのか、それともマンガというべきなのか。でもやっぱり絵本なのだ。子どもも大人も楽しめる、中身の濃い絵本だ。たまに見開きいっぱいにイラストが広がるが、ほとんどは左ページに一行程度の文章があり、右ページが一齣マンガのような、ナンセンスでそれぞれに工夫された絵を配している。これがなかなかユーモラスで笑いをさそう。ボローニャ児童図書展賞受賞作。(野上暁)
産経新聞1999/08/24