名前のない人

ワリスバン・オールズバーグ
村上春樹訳
河出書房新社

           
         
         
         
         
         
         
     
 さて、今回も絵本です。私もいいかげんしつこい性格……でも、絵本なんてのは、しょせん小さい子むけのもんさ、というへンケン(思いこみ、ともいう)を持ってる人って、これくらいやってもまだダメなんじゃないかな…いいもんね、私、めげずにがんばる。
 でも今日の絵本『名前のない人』オールズバーグなら、表紙の絵だけみたって幼児むきにつくられたものじゃない、というのがわかるとおもうんだけどなア…。
 いや、幼児むきにつくられたものの方が価値が低いってことじゃないよ、この点、誤解なさらぬように。ただ、どの年齢に何が一番アピールするかってことだと思うんだけど(一般的にいって〃いないいないばあ〃なんかは二十五歳にはウケない、と思う)、もちろん、三歳でこの本が好きっ、という人がいたっていいわけです。というか、当然よね。
 物語はお百姓のべイリーさんが秋の初めに車で男の人をはねたとこから始まります。ところが、その人は記憶がなくて言葉もしゃべれない。でべイリーさん一家は彼をとっても気に入ってしばらく面倒をみるんだけど、不思議なことにその人がいる間中、まわりの木々は紅葉しても、べイリーさんちは緑のまま、秋がこないの。こういう絵本は年齢には関係なく、好みか好みでないか、だけだと思う。中・高校生の図書館にはぜひ-。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1989/10/29