なるほどクリスマス降誕劇

バーバラ・口ビンソン:作/たかはしえいこ訳
すぐ書房

           
         
         
         
         
         
         
     
 これはとびっきり皮肉とユーモアの効いた、とんでもなく面白い本です。アメリカではクリスマスによく〃降誕劇〃-つまり馬小屋でイエス・キリストが生まれて……という芝居をやるんだそうですか、暴れん坊ぞろいで学校中に怖がられているハードマン兄弟がクッキーにつられて教会にやってきて、うっかりその劇を気に入ってしまったから、さあ大変!
 髪はボサボサ、トイレに隠れてタバコは吸うわ、悪態はつくわ、というイモジェーヌがマリア役をやるっていうんて、みんなは息をのむんだけど、イモジューヌは生まれて初めて聞いたそのストーリーに、マジにカンカンになって怒るの!
 ニンシンしてる女を馬小屋に追っ払ったんだって!? 赤ん坊を布っ切れにくるんで寝かせといたんだって!? そんなことして民生委員は何してたんだよっ!? という具合にね。
 毎年やってて正直いってウンザリしていたお話……なんとなく馬小屋は清潔でピカピカで、子どもを産むのにふさわしい場所よね、という具合にきれいきれいに作りかえられてた偽善がいっぺんで引きはがされ、貧しい若夫婦が火の気もない馬小屋に追いやられ、たった一人で若い女が子どもを産まなければならない、という実になまなましい悲惨な状況が現れてくるんです。
 そして本番でイモジェーヌが〃生まれたよ!〃と髪ふリ乱して叫んだときには全員、感動しちゃうんだよ。
 というお話が軽妙に(また翻訳がうまいんだ、これが!)語られます。
 ホント、一息で読めちゃうよ。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20)