にたものランド

ジョーン・スタイナー作
まえざわあきえ訳 徳間書店 1999

           
         
         
         
         
         
         
     
 夜汽車に乗って不思議な町へ。駅も町並みも公園も動物園も遊園地もサーカス小屋も、ホテルやレストランやお店の中も、精巧なミニチュアで構成された場面のそれぞれが、何だか異様でちょっとヘン。よく見ると、どの場面も身の回りで見かける雑貨やお菓子やおもちゃや文具がびっしりはめ込まれている。これを仕上げた作者の執念と執着たるや驚異的で、それを言葉で表現できないのがもどかしい。ともかく、実際に見てもらうしかない。何百、否おそらく何千もの小物類を見事に構成して作り上げた魔法の国での似たもの探しがこの絵本の楽しみ。
 “にたものランド”に向かう蒸気機関車も、エンジン部分はコーヒーポット。その上部にはミシン用の糸巻きから綿の煙が立ち昇り、前面の排障器にはハーモニカやミニカーが。側面にはおもちゃのピストルや乾電池を配し、車輪は空缶や王冠を使い、スパナやおもちゃの手錠でそれらを繋いでいる。街に出るとビルの側面がカーディガンだったり、乗用車の車輪はマッシュルームでヘッドライトはドングリ。雑貨屋のストーブがおもちゃの手榴弾で薪がシナモン、掃除機がT字型剃刀。しかもすべてが超リアルだから驚いてしまう。ピーナツが木馬に変身なんて可愛い物から、ピエロのズボンが絵の具のチューブでスカートがニンニクなんて笑える。大人も子どもも何時間見ていても飽きないからお買い得な絵本だ。(野上暁)
産經新聞2000.01.25