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子どもの力を信じて、その後押しをするような作品って、結構難しいです。へたすると、「あなたのために言ってるんだ」になるから。 『ナタリーはひみつの作家』(アンドリュー・クレメンツ:作 田中奈津子:訳 伊東美貴:絵 講談社 千五百円)はその辺りを心得てます。 小説を書いているナタリー(小学校六年生)は、友人のゾーイに見せる。感動したゾーイは、これを出版するにはどうすればいいのかを考え、行動していく。ナタリーが作家でゾーイがエージェントってわけ。 友人が書いた小説を教室で回し読みするとか、同人誌に発表とかじゃなく、いきなり出版しようと発想するゾーイ。自分がいいと思った作品を多くの人に読んでもらいたい=出版する、なのね。 「私たちは子どもだからそんなの無理だよ」なんて後ろ向きには考えない。 作者は、彼らを信じているから、出版に至るまでの、ナタリーとゾーイの様々な作戦をユーモアたっぷりに書き進めています。 もちろん現実はこんな風にうまくはいかないかもしれないけれど、行動を起こすことの心地よさを楽しめれば、それで充分。 前作の『こちら「ランドリー新聞」編集部』も読むと、この作家の姿勢がよく分かります。(読売新聞 200305012 ひこ・田中) |
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