ナウなヤング

水玉蛍之丞・杉元伶一

岩波ジュニア新書


           
         
         
         
         
         
         
     
 「『近ごろの若者』・・厳密には現在都会で暮らしている、高校、大学生/及び相当する年齢の人についての本」なんだけど……・ン?
 「ナウなヤング」という言葉は古いって?……・これはわざと。 「一九七〇年代に『近ごろの若者』を指すものとして重宝された言葉『ナウなヤング』が、現在では『死語』(笑)Cというシッポ付きのギャグでしかないこと」くらい作者たちはようく心得ているわけ。
 生活のいくつかの側面を取り上げて、現代の若者の考えとか生き方なんかを、鮮やかに、鋭く分析したもので、とくに「ナウなヤングの分類学」と「バカな大学生のできるまで」という章はヤングアダルト必読!
 たとえばどんな若者の一項目に、「いちおうの人々」というのがあって、これは職業はとたずねられて、「いちおう学生です」と答えるタイプ。「世間体は維持したいが、ちょっと変わったヤツだと思われたい」から、「いちおう」勉強したり、遊んだり、恋愛したりしてて、いってみれば、「完全に平凡ではないつもりだが、ひとりで目立つ自信はない」人たちのこと。
 といっても、若者に説教をしている本ではない。「二十六歳より十六歳のほうが偉い。両方を経験した僕が言うのだから間違いはない」という作者の言葉は本音である。 読みなさい。ためにはならなくとも、面白いから。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席90/01/21