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これは旧ソ連の本です。従って……というのもへンですが、静かで悲しく、生真面目で、そうして空気は冷たいです。 楽しい話もないではないけどね、ソ連の本て、はかなくて美しくてマジメで悲しい……という共通点はあるような気がするよ。 主人公の一人、フェージャの失望と苦しみはアルコール依存の父親です。 アルコールが、というより彼はそのために自分の父親を尊敬できず、他の人に父親があざけられるのを見るのがつらいわけです。 そうして、そのためにひからびてしまった母さんを見るのも。 そうしてフェージャはハトを飼い、飛ばすことにしがみついているのです。 もう一人の主人公はレーナ。 レーナは車いすの身で、だから特別の寄宿学校に行っていて、いつもは親の住んでいる町にはいないのに肺炎のため帰されたのてす。 レーナは賢い子です。健常児の学校から来た新しい先生がしょっちゅう涙を浮かべていた時、先生に私たちを可哀そうだと思わなくていいのだ、と教えたのはレーナでした。そうして、先生が、あなたは私より年上みたいといった時も、ホントにそうなんですよ、といってのけたのてすから。 この二人の子は色あいが似ています。 そうして元気なようでいて、私は一生歩けない、なのになぜ大人になるの? というレーナの絶望感に共感できるのはフェージャだけなのです。 ラブストーリー自体少ないけど、これだけ深みのあるのもめったにないよ。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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