ねえねえ、もういちどききたいな
わたしがうまれたよるのこと

ジェイミー・リー・カーティス
ローラ・コーネル絵

坂上香訳 偕成社 1996/1998

           
         
         
         
         
         
         
         
     
 女の子は自分の生まれた夜のことを聞くのが大好き。
 女の子が生まれた夜は、みんながはじめて家族になった夜。女の子とパパとママは血がつながっていないのです。
 女の子はこの話を何度も何度もきいているらしく、パパやママが説明する前から喋ってしまいます。
 真夜中に電話がなって飛び起きて、わたしが生まれたことをきいてパパとママは赤ちゃん用品をいっぱいつめたバッグを持って大急ぎで飛行機にのったこと。
 わたしを胸に抱いたときママは嬉しくて泣き出しちゃったこと。
  おうちに帰ってパパはおじいちゃんがパパにしてくれたように野球は最高のスポーツなんだよと話してくれて、ママはおばあちゃんがママにしてくれたように子守り歌を歌ってくれたこと・・・。
 等身大の生まれたての赤ちゃんの絵があって大きくあんぐりあけた口に「みらいのオペラかしゅのくち」と説明があったり、パパとママが病院を駆け回っているとき七つ子 (!)を抱いて青ざめているカップルにリポーターたちがマイクをつきつけていたり、おうちにいるときはママはやせる本を片時も手放さなかったり、あちこちに笑える個所がいっぱい。でもやはり読み終わったときには胸がきゅんとして、涙が出てしまうのです。
 作者のジェイミー・リー・カーティスは有名な女優ですよね。大変スレンダーな体つきでコミカルな役もシリアスな役もこなしてしまう素敵な方です。養子縁組の大変盛んなアメリカならではのストーリーだと思いますが、この女の子が何度も何度も生まれてきた夜のことを話してもらいたがるのは、自分がどれだけ望まれて生まれてきたか、どれだけ愛されて育てられているかを確認したいためなんだろうな、と思います。
 望まれて生まれ、慈しまれて育てられることは人間誰でも要求できる権利であると思うのですが、子供がそう感じられる瞬間って哀しくなるほど少ないのが現実ではないでしょうか。
 愛されている、守られていると子供が真におもえるのならば、親とは血がつながっているのかそうでないかは本当は二の次なのでは、と考えさせられました。(淺井郁子