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正義感が強く自然体の菜々は五年生。ある日偶然耳にした菜々への批判に、〈ねこ〉を被って変身する。菜々にとって〈ねこかぶり〉は本物の友情に出逢う通過点であった。軽いタッチで友情について考えさせられる一冊。 父の転勤による転校は菜々にとって、絶好の〈ねこかぶり〉のチャンスだった。 きっかけは前の学校で、「とても女とは思えない」という男子の菜々評や、「正義の味方ぶって迷惑」と噂しているのが、男子のいじめからかばってきたユキと級友だったこと。ガキっぽい男子の矢面に立って、頼りにされていると思っていたのに、実は利用されていたと知った時のショック。 〈ねこかぶり〉に批判的な母やのぼるを無視して、着古したTシャツGパン姿から、オトメチックな装いで新しいクラスにデビュー。狙いどおり“かわいこブリッコ”は成功して友だちができるが、外見を取り繕うようになった菜々は、他の人の外見も気がかりになる。 反面、新たな友だちの家に招かれ、TVドラマのモデルのような家庭と、家族のあり様を目のあたりにして、不自然さを感じている〈ねこかぶり〉の下の本来の姿がある。クラスで無視されている鈴木さんは、うっかり見せるありのままの菜々を自然に受けとめ、自分も〈ねこ〉を被っていると告白する。学校外の鈴木さんの素顔を知った菜々と鈴木さんの間には、本当の友情が通い始める。 いつしか、ありのままの自分と〈ねこかぶり〉の二面性に矛盾を感じている菜々。 そんなある日、体温を測ることで心の安定を図っている様なのぼるの、いじめにあっている場面に遭遇。思わず“着ぐるみ”をかなぐり捨てて、等身大の菜々が姿を表した―。 思春期の入口にある等身大の子どもたちが描かれていて、同世代に薦めたい。(三上啓子)
読書会てつぼう:発行 1999/01/28
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