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3歳の男の子のお父さんからおもしろい話を聞きました。 いつもは仕事で忙しく、坊やが起きている時間に家に帰れる日はなかなかありません。たまに早く帰った晩くらい…とはりきって、本を読んであげることにしたそうです。ところが、興奮した坊やは、起き出してしまい、夜中まで一緒に遊ぶはめに…。 「おやすみなさいの代わりに読んであげられる本はないかなぁ」そんなリクエストにお薦めしたいのは、『ねむいねむいのほん』。ねむたい子も、まだまだねむたくない子も、おやすみの準備ができたら、さあページをひらいてください。うさぎやねずみ、子どもたち。みんなが眠るまでの情景をまくらのようにふわふわふんわりと描き、やさしくあたたかい子守歌のように、のびやかな言葉が気持ちよく眠りに誘います。 続いては『おやすみ、くまくん』。いつものとおり、寝るしたくをしてお布団に入ったくまくん、なのにどうしたわけか、今夜はまだねむたくありません。窓辺に座って外を眺めると、まあるいお月さまのやさしい光が、お隣の家や、木や川、あたり一面に降りそそいでいます。その様子を見ているうちに、くまくんは、楽しい明日に思いを馳せて…。小さな子どもだけでなく、大人にも圧倒的な人気のこの本、手にとってページを開いた途端に、詩的な文章と五色刷りの美しく不思議な雰囲気のある絵が広がります。美しい絵の一枚一枚が、多くの人を魅了する絵本。本のおしまいには、お楽しみ付き。最後まで心憎い演出です。 かわって『くまとハンフリー』は、少年とぬいぐるみの心あたたまるストーリー。「ハンフリーはもうおおきいんだ。おもちゃのくまなんか、だいてねるのは、いいかげんにやめさせたらどうだね」と、パパがいうのを聞いてしまったハンフリー。けれどもその夜、ハンフリーのくまは、むくむくっと大きくなって、ハンフリーを冒険へとつれていってくれます。ヨットに乗ったふたりは川をくだり、大きな海に出ます。そこへ嵐がやってきて…。くまの大きな胸にだきしめられたハンフリーは、いつのまにかすやすやと寝息をたてています。読んでいるこちらにまで頼もしいくまのあたたかさが伝わってくる一冊。 気持のいい眠りと、楽しい夢を約束する、「おやすみまえの絵本」、お気に入りを見つけてください。(星野博美) 『ねむいねむいのほん』ジュディー・ヒンドレイ文/パトリス・アッグス絵/ひがしはるみ訳 『おやすみ、くまくん』クヴィント・ブッフホルツ作、絵/石川素子訳 『くまとハンフリー』ジャン・ウォール文/ウィリアム・ジョイス絵/山内智恵子訳
徳間書店「子どもの本だより」1999年11月/12月号
テキストファイル化富田真珠子 |
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