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これはネコと人間が対等に、仲良く暮らしていたころのお話です。 ネコの「はなこ」は漁師のトムじいさんと二人で、「ネズミあな」と呼ばれるイングランドの小さな港町に住んでいました。 はなこは新鮮な魚を毎日食べていました。それもいつも同じものではなく、海のスープやタラのやきもの、よだれのでそうなスズキやタイのあみやきといったごちそうを食べ、たいそうごきげんな毎日を過ごしていました。 ある年、きびしい冬がやってきて、「嵐(あらし)の大ネコ」が海で荒れ狂い、漁師たちは、海に出られず魚が取れません。クリスマスを間近にひかえ、ひもじい子どもたちをきづかって、トムじいさんとはなこは嵐の海へでかけます。はなこのごろごろ声は、わが家をたたえる歌になり、嵐の大ネコのさわがしい叫びをうちまかしました。その夜の村は、ネコも人間も一緒になってひもじさが思い出にかわるまでごちそうを楽しみました。 それから毎年クリスマスの前夜、「ネズミあな」の村人は、トムじいさんをたたえ、魚まつりをひらきました。 クラシックで装飾的なふち飾りを描いた画面づくりが神秘的で、古い時代の不思議な雰囲気をかもしだしています。 ネコの毛並みのよさ、トムじいさんの調度品や道具などが実に細密に描かれて、質感豊かな絵は、みるものの目を楽しませてくれます。 (安)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化塩野裕子
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