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日本史の授業では現代史が不当に軽視されているのではないだろうか。安保条約の成立過程や、それに対する当時の人々の反応を知っている大学生が、いま何パーセントいるだろう。入試にでないからなどというのは理由にならない。われわれに直接かかわっている昭和史を知らないというのは、絶対に問題だ。 というわけで、現代史にかんする本が目につくとかかさず読んできたが、そのうちの一冊『日本現代史読本』は、若者のみならず、現代人の必読書といっていい。 「日清戦争から、その一〇年後の日露戦争にかけて、台湾を領有した日本」が「アジアの水準から欧米の水準へ、被圧迫国から独立国ではなく圧迫国へ」と変化していく経過を昭和前史として簡単にまとめたあと、昭和の、大衆運動とその弾圧、軍部の台頭、アジア侵略、第二次世界大戦参戦、敗戦、そして戦後から現代までがまことに手際よくまとめられている。といってもたんなる知識の羅列ではなく、それぞれのテーマにそって、いくつかの象徴的な事件を深くほりさげながら、大きな流れを追っているのが特色。 「明治憲法を合理的に解釈しようとする立場に対する、右翼を先頭とする君主主権説の側からの攻撃として展開」された「天皇機関説問題」の章など、事件の内容を端的に解説しつつ、当時の日本の方向性をくっきりと浮彫りにしている。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/04/27
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