にんぎょう しばい

キーツ/作
きじま はじめ/訳 偕成社 1977

           
         
         
         
         
         
         
     
 スージーとロベルトは二人で人形をつくって人形しばいをすることにしました。ところがお客さんのなかに、だんまりやのルイがいたのです。
 ルイがどういう子か、ということは一切説明されていません、単語では──精神薄弱とか、
自閉症、みたいな単語ではね。行動しか書いてないのです。
 ルイはお芝居が始まって、人形のガッシーちゃんとねずみが出てくると、立ち上がってしまいました。そしてガッシーちゃんに一生懸命、こんにちは、をいいはじめたのです。ロベルトとスージーはちょっと考え、ガッシーちゃんに、お芝居を続けたいからすわってくれとルイにいってもらいました。ルイはすわりました。
 ルイは熱心に見ていました。一番大きく拍手したのもルイでした。お芝居が終わったあと、ガッシーちゃんを離さないルイに、ロベルトはガッシーちゃんも疲れたからうちへ帰らないといけないんだよ、といわなくてはなりませんでした。
 でも二人はルイのことを忘れられなかったの。二人はとても頭がよくて優しい子だったから、ルイだっていじめたりからかわれたりしたら当然苦しんだり傷ついたりするんだってことも、ホントいって人形たちと一番高い共感ができたのはルイなんだってことも、よくわかってたんだよね。で、この二人はただルイにガッシーちゃんを、そんなに気に入ったんなら、あげるよというよりもっと素晴らしいことをしたんです。
 こういうことを思いついて実行できるなんてホントに凄い! そして、こういう物語を創り出せるキーツには、まったく脱帽です。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化岡田和子