パディーの黄金のつぼ

デイック・キング・スミス

三村美智子訳 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
    
 アイルランドは昔から、そしていまも、民話と妖精の宝庫です。
 ひと口に妖精といっても山に住む者、海に住む者、体の大きさも性質もさまざまで(詳しく知リたい人は〃妖精事典〃みたいなのが二、三出てますから、そっちを見てください)、民話の内容も妖精が出てくるから子ども向きってものでもありません。アイルランド民話の本も、子どもの本から大人向き、研究書まで何冊もあリます。
 そのほかに、子どもの本には、現代の子どもたちが妖精に会う、というタイプの創作がパターンとしてあリますが(たとえば『ティムとふしぎな小人たち』とか『空をとんだおんばろ校舎』とかね)、そういう話で子どもが会う妖精はほとんど小人族で、家事手伝いをするブラウニーとか、くつなおしで人一つずつ金のつぼを持っている、といわれているレプラコーン、土掘り鉱夫のドワーフなどが人気です。
 『白雪姫』の小人たちね、あれもドワーフだよ。
 これはそのなかでも新しめの本で、アイルランドで一人っ子で誕生日で、しかも長ぐつに穴があいていた……〃という、妖精に出会える条件がそろっていた女の子が、近所の森に住んでた老レプラコーンと出会う話です。
 豊かな自然と、えんえんと続いてきた時の流れと(なんせ、この老レプラコーンは四百歳なんだから-)を感じさせてくれる物語らしい物語です。
 早い人は二年生くらいから……読んでもらうなら、一〜二年生でもOKでしょう。これは主人公の年齢と、説み手の年齢がだいたい同じでいいタイプの話です。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ子どもの本案内』(リブリオ出版1996/07 本体1796円)