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大好きなSF映画のひとつに『未来世紀ブラジル』がある。絶対的な管理社会のなかで個人の自由と夢が押しつぶされていく様を、斬新なイメージで描いた作品で、『ブレードランナー』『二〇〇一年宇宙の旅』に匹敵する傑作だ。この映画が、その上映をめぐって大スキャンダルとなった。このいきさつを「ロサンゼルス・タイムズ」の記者であるジャック・マシューズがルポしたのがこれだ。 そもそものきっかけは、監督のテリー・ギリアムが編集したフィルムを提出したところ、大手映画会社の社長であるシドニー・シャインバーグが、「契約よりも十七分長い」ということを理由に、上映を拒否したことである。これに対してギリアムは自分の映画を守ろうとし、シャインバーグはもっと大衆にアピールするもうかる映画にしようと画策、ついに両者大激突ということになる。(こういった場合、監督が勝つことはほとんどない) このギリアムの戦いは表現の自由を求める人々すべての戦いでもあり、これはまた『未来世紀ブラジル』という映画のテーマでもあった。ここで人生は芸術を模倣するということになるのだが、ギリアムは徹底的に戦略をねり、様々な手を使いながらゲリラ戦を展開させていく。 自由と映画を愛する人すべてに勧めたい一冊!(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1989/06/18
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