べんけいとおとみさん

石井桃子:作
山脇百合子:絵 福音館書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 お正月の楽しみの一つ、年賀状の中に、ときどき家族の名前と並べて、ペットの犬や猫の名前や年を書いたものがあります。家族の一員なんだなあ、とほほえましくなりますが、この物語も、そんな一家のお話です。
 七歳の男の子かずちゃんの家族は、お父さんとお母さん、かずちゃん、五歳のまりちゃん、それに九歳のとみこさんと三歳のべんけい君です。一番のお姉さんはとみこさん?実はとみこさん、いえおとみさんは猫で、ついでにべんけい君は犬なのです。
 でも、おとみさんはかずちゃんが生まれる前から、この家にいるのですから一番いばっています。そしてべんけい君の自慢はかずちゃんと学校に通っていることです。二人(?)の活躍ぶりには思わずため息をついたり、笑ってしまったり。
 電気洗濯機が家庭に普及し始めたころのお話しですが、四人と二匹の毎日が、作者の確かで温かな筆致で、生きいきと書かれていて、少しも古さを感じさせません。時代を超えて、親子で楽しめる一冊です。(和)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化渡辺みどり