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歌詞だけとむかあうというのもいいものだ。 『ビリー・ジョエル詩集』を読んでそんな気がした。 左ページに英語の歌詞、右ページにその日本語訳という対訳の形で、九三の詩が収められているのだが、曲から引きはなされた歌詞は色あせるどころか、かえって深みをましているようにさえみえる。恋の歌もいいが、いらだちをうたったものもいい。たとえば「革命を起こしたいのにその暇もないし/なんでいまだに”いい奴”でいられるのかな/だけど 正気と狂気の境目に/だんだん近づいているのは確かだ」(ボーダーライン) それから、「いつまでも犠牲を払うばかりで報われない/何だか氷の上を走ってるみたいだ……/滑ったり転んだりしながら氷の上をひた走る/僕の人生 どこで狂っちまったのか/それでも走らなくちゃいけないんだ」(ランニング・オン・アイス) でも「過去に邪魔されたことなんか/一度もないぜ」(キーピン・ザ・フェイス)という科白もビリーらしくていい。 なお、シンコーミュージックからはほかにもビートルズ、ローリング・ストーンズ、デビッド・ボウイ、サイモン&ガーファンクル、ジョン・レノン、スティービー・ワンダー、ホール&オーツ、クイーン、ブライアン・フェリーといったアーティストの詩集が、やはり同じく対訳の形ででている。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/04/03
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