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アニメの「魔女の宅急便」のなかでさ、ねえアンタ、どうして空を飛べんの? って聞かれて、主人公のキキが「私の血がそうさせるの」って答えると、相手の子も「それじゃ私とおんなじだ、私の中にもさ、絵描きの血が流れてんのよ」っていうシーンがあって思わずそうなんだよね、とつぶやいてしまったけど……そうなのよねェ。 なんか最近やけに「クリエーティブなお仕事」ってのが注目されてるみたいだけど、でもさ、絵描きとか作家って、なりたいと思ってなるもんじゃないと思うんだよね。どっちかっていうとさ、それから逃げたくてさんざジタバタして、でも逃げきれなくて最後には立ちむかうしかない、で、一つ作りあげるたびに、もうこんな苦しいことはしたくないって思うんだけど逃げられないってのが「クリエーター」なんだよね。確かに喜びは大きいけど、苦痛も大きいんだぜェ。 『ぽくの中のぼく』はそういうクリエーターの母子の話です。仕上げにかかると口もきかず、完成すると二、三日ぐったりとして幸福、という彫刻家の母親と芸術的なことに対しては完全に対等な息子よ。 クリエーターであることは決してあこがれるようなものではないということをよく知っている日本のティーンのクリエーターたちに、この本をぜひ読んでほしいと思います。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞 1990/03/25
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