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中学三年生になってまもなく、まだ一度もあだ名のついたことのなかった太田義正君に、階段の掃除が人並みはずれて熱心だからといって、「カイダン」というあだ名がついた。 かれはサイモンとガーファンクルの歌――とりわけ「ボクサー」の歌を口ずさみながら、ひとりほうきを動かし、ちりとりを滑らしていた。 階段によって級友を失ったり、同じ階段によってひとりの愛らしい少女も見つけた。 広島県在住の作者は、豊かな自然をバックに、彼の友達のこと、異性のこと、家族のことをいきいきと描いています。 この本には、他に「淵の夏」、「崖」、「颯田原の庭石」、「草を刈る人」がおさめられていて、少年のナイーブな感性が伝わってくるさわやかな短編集です。(あ)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山地寿恵
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