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子どもの本の関係者なら、誰でも知ってるローべルおじさんの本です。 見かけも幼年文学だし、中にも〃四歳から〃と書いてあリます。 出版された年も一九八一年で、そう古くもなく、かといって新しい、という年でもあリません。 一九八一年というと、もう十六年も前ですが(その年に生まれた子はもう高校生だ!)、現在の日本の文化の切れ目が一九七八、九年頃にあるので、八一年というのは昔ですが、いまの文化の上にもあるのです。 そしてもう一つ、この本が歴然といまの本である(つまリ現役ってことね)理由は、主人公、ゾウの男の子が〃みなし児〃だということです。 現在のテーマは〃愛情不足〃ですから、みなし児が出てくる物語はそれだけで現代の物語になりうる可能性があるのてす。 この子の両親は、ヨットに乗って出かけたまま戻ってきませんでした。 彼はかぜをひいて寝ていたため、取り残されてしまったのです。 そこに現れた年とったおじさんが彼を引き取リ、日常二人で何気なく笑って暮らしながら、両親を亡くしてまっ黒な穴をお腹の中に抱えてしまった小さな子を、注意深くかつ必死になって、その穴から引き上げようとしてくれます。 本人もまた懸命に、穴をふさごうと努力します。 私は、この本をこっそり読んで、ひっそリ泣くだろう、たくさんの中学生、高校生のことを考えます。もし、この本を必要としているお客さんがいたら、どうぞ、そっと手渡してやってください。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』(リブリオ出版 1997/09/20)
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