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今月ご紹介するビヴァリー・クリアリーの『フィフティーン』(堀内貴和訳、東京書籍)は、さえない女の子とかっこいい男の子の恋物語です。と言えば、これは実によくある話で、もう読み飽きたと思う人もいるでしょうが、この本はちょっと違います。 これは要するに、自分に自信の持てない女の子の話です。美人じゃない、頭も良くない、将来の目的もない。そういう言っても始まらないようなことが、恋をすると急に気になり出したりするのだから、まことに恋は魔物です。と言うか、彼女は全人格をかけて恋をしてしまうのですね。「これと言ってとりえのない私は、この先どうして生きて行ったらいいのか」。この大問題を解く鍵が、恋にあったというわけです。 結論としては、彼女は見事にこの大問題を解いて、恋を成就させます。そのとき彼女はとてもリラックスした気分になっています。これがこの話のポイントでしょうか。 作者はアメリカ女性。一九五〇年代に書かれたものなのに、全く古さを感じさせません。一五歳で堂々と、デートもアルバイトもしてるもんねえ。(横川寿美子)
読売新聞 1990/03
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