富士山大ばくはつ

かこさとし
小峰書店 1999

           
         
         
         
         
         
         
     
 日本各地に「富士」と呼ばれる山は三百以上もあるという。日本一高くて美しい富士山への人々の憧れが、高低を問わず同型の山々に何々富士と命名して親しませてきたのだろう。この絵本は、富士山の誕生からときおこし、噴火の歴史、気象変化、地形の変化、現在の動植物分布までを、巧みな図解と特徴を見事に捉えた夥しい数の図鑑画で紹介していく。
 あの見事な富士山のでき方を知るには、地球上に日本列島が登場したころの様子を知らなけれならない。そこで著者は、宇宙の誕生から地球の誕生、さらにアジアの東の激しいプレートの動きの中から日本列島が形成されるプロセスをわかりやすく図解してみせる。

 南方から動いてきた小さな島が列島にぶつかって今の伊豆半島ができ、押し合った所に皺ができて、そこから地底のマグマが吹き出して富士山のもとになる小御岳(こみたけ)が生まれ、それを包み込むようにして一万年前頃に古富士が形成される。更にまた激しい噴火が繰り返されて、六千年ほど昔に今日のような形の富士山が登場するのだ。富士山は生きている。まだまだ若い火山で、今はちょっと昼寝をしているに過ぎない。いつまた活動を始めるかわからないから、富士山のことを良く知り、大自然の不思議を学んで欲しいと著者は結ぶ。さながら富士山大百科ともいうべき濃密な内容になっていて、小さな子どもから大人まで十分に楽しめる。(野上暁
産經新聞99.07.27