ふくろう模様の皿

アラン・ガーナー
神宮輝夫・訳 評論社 1967/1976

           
         
         
         
         
         
         
     
 親同士が再婚したアリスンとロジャは夏休み、アリスンの母親の別荘にやってきます。深い谷間にある小さな村のお屋敷。この村出身であるグゥインの母親はお屋敷の家政婦に雇われ帰郷。三人の子どもは仲良くなる。ある日アリスンの部屋の屋根裏からたくさんの皿がでてくる。描かれた花柄のパターンを描き写していたアリスンはそれがふくろうの隠し絵なのに気づく。さっそく写した紙を切り抜き組み合わせるとふくろうの置物ができる。が、翌朝になるとそれはどこともなく姿を隠す。しかも皿からはパターンが消えている。憑かれたように、何枚も何枚も写しとってふくろうを作り出すアリスン。実はそれはこの村に延々と続く悲劇を封じ込めたものだったのです。彼女は花のままでいたいのに、人間はいつもふくろうに変えてしまう・・・。こうして封印は解かれ、悲劇は三人を巻き込んでいく。と書けばまるで近頃はやりのホラーようですが、もちろんそう読んでも充分楽しめますが、ここに描かれているのは、誤解や無理解や行き違いや嫉妬などで、互いを傷つけあっていく、人間関係そのものです。
 ベースとなったのはウェールズ神話。呪で、人間の妻を娶ることができなくなった領主は魔法使いに花で女を作ってもらう。しかし、彼女は領主の留守に他の男と愛し合うようになる。男は領主を槍で殺す。魔法によって生き返った領主が今度は男を殺す。そして花から生まれた女はふくろうに変えられてしまう。という性愛がらみのものですから、それを三人の子どもにトレースして語るのは無理があるとの批判も当時はありました。が、作者が見ていたのはそんなレベルではなく、人間の弱さが引き起こしてしまう関係性の悲劇です。そして、もっと重要なのは、それを子どもに無縁ではないこととして描いた点です。つまりガーナーは子どもを聖域に置いた物語を書かなかったのです。
 三十年以上まえの作品ですが古びてはいません。いや、今こそ新鮮な物語といってもいいでしょう。(ひこ・田中)