ふたりのひみつ

I.ボーゲル:著/掛川恭子:訳
あかね書房

           
         
         
         
         
         
         
     
 『ふたりのひみつ』の双子、エリカとインゲは九歳です。
 エリカはインゲより三十分先に生まれ、とびきり面白いことを思いついたりするかわリ、しょっちゅうしょっちゅうお姉さん風を吹かせてインゲに金切り声を上げさせるタイプです。
 この本の語り手はィンゲで、姉妹同士のケンカや、二人のうちどっちが隣の女の子マグダと一番の親友か(なにせ二人はうリ二つなので)という競争や、やきもちなど、本当に感心するほど微妙な感情のからみ合いが語られます。
 ボーゲルって、そういうものを書いたら天下一品なのよ。
 そして「エリカなんて死んじゃえばいいのに!」と叫んだ何週間か後に、本当にエリカは病気にかかって死んでしまいます。
 子どもの皮膚感覚で文章を書く…というのは大変難しいことですが、大人にとって大事なことが子どもにはまったくそうでなかったり、子どもにとってはそれしか考えられないくらい大きなことが、大人にはどうでもいいことだったり、というそのずれがしみじみと大人には実感できますが、実際の子どもにわかるかというと……。
 わかる子もいるでしょう。
 でもこの本の読者の大部分、この本を読んで、「まあ凄い!」と思う人の 大部分はもっとずっと大きい人たちだと思います。
 でも、この子ならわかるかな、と思ったときには、ぜひ読んでやってみてください。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20)