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『風葬の教室』はいわゆるイジメの物語です。小学校五年のちょっとかわいい転校生が、クラスのみんなにいじめられるという、どこにでもありそうなストーリーだけど、これはたぶん、日本で初めてのマットウなイジメの本だと思う。だって、イジメが問題にされるようになってから、それをテーマにした本が何冊もでたけどたいていは、「他人をいじめるのは悪いことです。だからみなさん仲良くしましょうね」というお説教調のものか、もしくは今までいじめてた子がそれに気づいて反省するといった話ばっかりだったんだもの。 いじめる人は悪い人、いじめない人は善い人、なんて…。本当に怖いのは、善人が、悪人に変わっていく過程なんじゃないかなあ? 主人公の女の子をだんだんと追いつめていく集団の〃狂気〃は、ナチスを思い起こさせます。そして、先生たちは何も理解していない。 そして、そのことで知らずにイジメる側に加担していきます。 大人の本の装丁で出ていますが、小・中・高校の図書室にぜひ入れてほしい一冊です。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞1988/06/05 |
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